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3Dシミュレーション制作で、高齢者の溺水事故を防ぎたい。

工学部 機械機能工学科4年 小池 遥 さん

生体機能工学研究室は、機械工学だけでなく生体機能工学の知見も広げられる研究室です。中学生の頃から将来は住宅に関わる仕事がしたいと考えていました。人が生活の中で日常的に使用する機器を開発するなら、それを修得するために生体機能工学研究室がぴったりだと思いました。機械の研究を行なっている大学は沢山ありますが、人体についても学べる学校は少ないです。生体機能工学研究室に入るために芝浦工業大学に入学したと言っても過言ではありません。そういった意味で、充実した学生生活が送れています。

研究室では山本創太教授のもと、3Dシミュレーションソフトを用いて、生体の機能や特性を力学によって明らかにする研究を実施しています。研究室では一人ひとりが異なる研究テーマを設定します。私の場合は、高齢者の浴槽内での溺水事故防止です。昔の浴槽は、ステンレス製の深く狭い形状が一般的でしたが、近年では洋風文化の影響もあり浅く広い形状へと様変わりしました。身体を倒した状態で足を伸ばし、リラックスして入浴できる利点が、意識を失った人の鼻と口が水面に浸かり呼吸を妨げるリスクを高めているという見解もあります。高齢者の数が増えていることもあり、実際に年々事故の件数は増加傾向にあります。溺水を防ぐ新たな浴槽構造やシステムの開発は急務です。溺水しにくいような姿勢や構造、寸法などを力学的に考え、それを防ぐためのメカニズムを解明するのが研究の目的ですが、水が張られる限り人間が絶対に溺れない浴槽なんてありません。溺水に至る条件やポイントを探すことが大切です。

冬場は気温差により、浴室内でのヒートショック現象が多発します。意識を失って溺れるメカニズムを3次元の仮想空間で映像化し検証しています。浴室で起こり得る現象をシミュレーションソフトで正確に作り上げるには、物理法則や人体の動きに関する定義が正しく設定されていなければなりません。物と物の接触に関するプログラムが正確でなければ、物体を貫通してしまったり、現実世界で起こり得ない動きになったりするのです。いくつものエラーを解決しながら地道に作り上げていきます。私はまだソフトを使い始めて1年も経っていないので分からないことも多いです。自分だけで解決できない問題は経験豊富な先輩に確認してもらい、アドバイスをもらいながら制作します。納得がいくまでとことん突き詰める性格は、研究者に向いているのかもしれません。最終的には山本先生にチェックしてもらうことになるのですが、先生はやっぱりすごいです。ここは少し不安だなと思っている部分は、必ず指摘されます。だからこそ成長できていると思います。苦労もありますが、人命を救うことにつながる研究になるため、完成したときの喜びは大きいです。

来春から念願の住宅設備機器メーカーで勤務が始まります。その企業には中学生の頃から憧れがあり、高校を選択するときも理系を軸に選びました。もともとは建築関係の仕事をしている父の影響で建築に興味を持っていましたが、将来について相談を重ねる中で次第に住宅設備機器に魅力を感じるようになりました。年齢を重ねるごとに将来のビジョンが具体化していったように思います。毎日使う設備機器ですべての人の安全と快適な暮らしを支える製品を作り出すことが、私の夢です。